ヨルノサンポ団の日記

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"血液型で病気にかかりやすいとか性格を分類できたりとかするのか"(医学のつぶやき16 るーにー)

さて、最近ありがたいことに、一定の読者として登録していただける方ができ、毎日それなりの方々にブログを読んでいただけている。ポップで楽しい記事は他の団員が書いてくれることだと思う。団員に筆者も写真とかイラストとか入れて見栄えを、、、といったら、一蹴された、「やめておけ」と。なので、真面目な医学論文紹介を続けていこうと思う。どんな読者の方々がいらっしゃるのかと思い、ブログを拝見したが、どれもこれも面白いものだ。筆者には難しい。ただ、折角なので、登録いただいた読者様の書かれている記事に関連しそうな医学論文を引っ張ってくることにした。(とはいえ、ランダムであるためにどの読者様かは記載しないがご了承いただきたい)

 

今回は「新型コロナウイルスはA型がかかりやすい」という記事から派生させて、血液型について論文から客観的に議論していきたい。(原著は、"Relationship between the ABO Blood Group and the COVID-19 Susceptibility")

この論文は、武漢と深エンの一般人とコロナ感染者の血液型を調べたものだ。武漢では、A型であると感染リスクが増大(OR1.279 1.136-1.440)し、O型は感染リスクが低下(OR0.680 0.599-0.771)するというものである。一方、深エンでは、AB型で増加(OR2.008 1.427-2.824)、O型で低下(OR0.627 0.484-0.812)であった。

これ自体は個人的にはさして驚くようなものではないと思う。実は、COVID-19の兄貴分であるSARSはO型には少ないという報告も過去にあるし、そもそもウイルス感染が血液型によってかかりやすいという報告自体そこそこ存在する(例えばB型肝炎ウイルス)。

では、なぜA型の人の方がかかりやすいのだろうか。勿論、正しいことは以前不明であり、現時点での仮説であるが。ABO式血液型というのは赤血球に色々な糖の付属物がくっつくことによって決まっている。A型にはA型の付属物、B型にはB型の付属物、ABにはその両方という風にだ。そして、同時に抗体というものを持っている。この抗体は、その付属物を持つ赤血球を攻撃するものである。例えば、抗A抗体というのは、A型の赤血球を攻撃する抗体である。下記の図のように、抗A抗体は例えばB型の人が持っている。もちろん、抗A抗体はB型の人の赤血球は攻撃しない。しかし、例えば輸血で、B型の人にA型の血を入れるとどうなるか。悲惨なことになる。お互いの抗体がお互いの赤血球を攻撃してしまうのだ。

実は、この抗A抗体がCOVID-19が肺に感染するのを(ACE2というタンパク質を介して)、阻害しているのではないかと言われているのだ。

 

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もちろん、関連があるかどうかは、まだ不明であることは述べておきたい。まず、この研究論文では対象の人数が少ない。また、比較した人達が持っていたかもしれない他の病気、例えば糖尿病などを補正することができていない。それに、そもそも論として、B型で感染が低下するというデータにはなっていないし、A型とAB型の増加が統計的にどこでも有意なわけではない。そのため、こういう可能性があるくらいでいいと思うし、仮に関連があったところで、やることは一緒である。(それに、O型の人はかかりにくいのではないか、というのがSARSの報告と合わせると適切な仮説に思える)

 

上に述べたとおり、実は病気と血液型の関連の論文は結構多くあって、癌や心血管系イベントに対しても実は血液型で傾向というのは色々報告されている。(例えば、B型は癌になりにくい(細かい種類の癌に対してもいくつか報告がある)とか、O型を決定する遺伝子が心筋梗塞に保護的に作用するとか)

 

ただ、よく言われる血液型と性格の関連は否定される論文が多く、テレビで関連がないと否定されているのをみた人もいるだろう。

そんな中、日本の弘前大学から関連する可能性があるかもしれないという論文がある。これは、DBHという、神経の伝達物質に関連する酵素に関連する遺伝子が、血液型の遺伝子の影響を受けるとして、ABO式の遺伝子検査(遺伝子多型)を調べ、性格気質検査(TCI)のスコアで評価したものだ。そして結果としては、関連があるとの結論になっている。

しかし、実はこの話はもともとhobgoodの仮説というもので、1988年に提唱されたが、実は1991年に関連する遺伝子がたくさんあるために否定されているものである。そのため、筆者も一応結果は出たけど、、、というようなもので、残念なことに血液型と性格の関連を示している論文はこれ一本しかない(少なくとも筆者は見つけられない)。そのため、やはり眉唾な部分があると言わざるおえないだろう。

 

やはり、性格というのは多岐にわたるものであり、ステレオタイプに人を見て決めつけるということはいけないのだ。