ヨルノサンポ団の日記

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"風邪に抗菌薬は必要か4(発熱)"(医療のつぶやき24 るーにー)

さて、今日からは風邪の症状に対する薬剤について考えてみよう。まずはやはり発熱に対してであろう。当然熱があるとしんどい。筆者は幼い時病弱であったのかよく発熱し寝込んでいた。そういう時は必ず「温かくして、頭は冷やして、解熱剤を飲んで、寝ていた」。ちなみに、医療での発熱とは37.5度以上のことを言う。

 

では、わかっている範囲ではどのような対応が最も望ましいのであろうか。もちろん結論が出る部分ではない。なので、サブタイトルも「医療」のつぶやきとしている。ただ、今回もできるだけEBMを大事にしていきたい。(EBMとは、evidenced based medicineの略で、客観的情報をもとに医療を行うこと)

 

まず、なぜどのようにして人の体は熱を上げるのか。決してウイルス自体が熱を出しているわけではない。ウイルスに対応した免疫細胞からサイトカイン(免疫の情報伝達物質のようなもの)が関連して、脳の視床下部という部分の体温調整機能を意図的に変化させる。すなわち、普段は36度くらいを正常としている部分を意図的に38度くらいが平常と認識するように変化させるのである。すると、当然普段の36度では体は熱が足りないと感じる。すると体は熱を作るために筋肉を動かす、そう震えるわけである。

では、なぜ体が熱を出すかというといくつかの理由が言われている。一つは熱を上げることで細菌等の活動を抑える可能性、もう一つは免疫系の活性化である。

ちなみに上がりすぎて42度を超えると脳の障害が生まれると言われているが、普通はそこまでは上がらない。

 

頭を冷やすことはもちろん本人の不快感をとるという意味で重要であるし、震えているなら温かくしてあげることは当然理にかなっている。ちなみに熱い風呂に入ることがいいかどうかはなんとも言えない。また論文見つかったら書きたい。まあ、やりすぎないようにしてくれ。この記事のメインは解熱剤についてなので。

 

まず、解熱剤は色々種類がある。買うときに成分表示を見て欲しいが、ざっくりと4種類知っておけば困らない。それは、アセトアミノフェンイブプロフェン・ロキソプロフェン・アセチルサリチル酸(アスピリン)。アセトアミノフェン以外はNSAIDsというグループでも呼ばれる解熱・鎮痛薬である。

 

命に関わる可能性があるところから話していこう。まず小児にアセチルサリチル酸は処方しない。これはライ症候群という病気を引き起こし致死的になる可能性があるからだ。ライ症候群とはまだ原因がはっきりしていないが、インフルエンザウイルスや水痘ウイルス(いわゆる水疱瘡)にかかった子供に対してアセチルサリチル酸を飲ませると致死的になる可能性がある。ただ、このライ症候群は原因がはっきりしていない。肝臓の脂肪変性、ミトコンドリア変性などが言われているがはっきりはしていない。アセトアミノフェンイブプロフェンはある程度は安全に使えるという報告はあったと思われる。

 

今日一番伝えたかったことは書けた。子供に成分表示も見ないで安易に薬局で解熱剤買って飲ませるのはやめて欲しい(市販の薬に子供にはダメってきちんと書いてあるものはあるが)

 

次に、NSAIDsの処方が風邪の治癒を遷延させたという報告がある(Intern Med 2007;46:1179-1186)。というより有名な感染症の教科書であるMandellに解熱剤はやめとけって書いてあった気がするのだが、、、(あ、結論書いちゃった)

 

かといって、不快感が強かったり、消耗が激しかったりする場合は使用しても良いとも思われる。

 

あと、イブプロフェンでコロナが悪化するという報告も出てはいるが、これに関してはまだまだなんとも言えない。イブプロフェンで悪化するかもしれないし、他の解熱剤でも悪化するかもしれないし、全く関係ないかもしれない。避けたほうが無難だとは思うが、他の解熱剤も悪化の因子の可能性がある。少なくとも、売り切れるほど積極的に薬局に行く意味はあまり感じないのだが、、、

 

じゃあ、筆者が全く解熱剤を使わないかというとそうでもない。基本使わないのだが、結局のところサービス業であるので、笑顔でやめたほうがいいよ、と言いながらも処方することがあるし、怖い看護師さんに「解熱剤〜〜!!」って怒られて涙目で出すことがある。よくないことだ。

 

今日も病院ではexperienced based medicineが繰り広げられているのだ。