ヨルノサンポ団の日記

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"精神的不調は指導者に必要か?3"(医学のつぶやき29 るーにー)

さて、先日はイギリスの首相を例に、ホモクリットとノンホモクリットの逆転について説明した。折角なので、アメリカの大統領でも似たような例があるので紹介しようかと思う。下の写真を見て欲しい。

 

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ご存知であろうか、ニクソンケネディである。まず、ケネディといえば、アメリカの大統領の中で人気の高い大統領である。アメリカ合衆国史上、選挙で選ばれた大統領としては最も若い大統領であった。また、彼が在任期間には、ピッグス湾事件、キューバ危機、ベルリンの壁、宇宙開発競争と様々な事件が起きている。特に、キューバ危機は第3次世界大戦の危機と当時言われており、それをケネディは見事な手腕で切り抜けた。そして、パレード中に暗殺されたことも彼の名が残る要因でもあるとは思う。

一方でニクソンといえばベトナム戦争からの全面撤退やドルショック、ウォーター事件での辞任といったイメージがある。正直なところ一般的なニクソンのイメージは知らないが、小学生の時に読んだケネディの漫画の後半に少し出てきていたが、決して良いイメージでは描かれていなかった。

特にこの写真は大統領選の時のものであるが、ケネディニクソンの大統領選挙前のテレビ演説で、ケネディが事前の支持率の情報をひっくり返す要因となったものである。そして、このテレビ演説から人前に立つイメージが重要であり、どういう格好をすべきであるかという議論が巻き起こったことも有名な話である。

つまり、一般大衆にはケネディは素晴らしい大統領で、ニクソンはイマイチな大統領であったというイメージがあるような気がする。

 

当然世の中そう上手くは行かないものだ。

ケネディは、大統領選挙での不正、マフィアとの関係、マリリンモンローを含む多くの不倫関係、ピッグス湾事件やベトナム戦争での優柔不断など批判されている点が多い。残念なことであるが、キューバ危機の回避はケネディの在職中の外交施策の中で数少ない称賛されるものであった。

ニクソンは、アメリ環境保護局の設置や麻薬取締局といった環境対策や麻薬対策で一定の功績を残しており、近年評価が見直されてきている側面もある。

 

では、彼らは精神医学的にはどうだったのだろうか。ケネディ双極性障害の要素があったのではないかと推察される。気分高揚的な要素が活気を生み、彼の政治での原動力になった(そして、女性スキャンダルにもつながった)。あるいは、鬱的な要素が、現実を見つめる力をつけたのではないかと推察される(そのほかにも医学的には副腎不全に対してのステロイドアンフェタミンという要素もある)。一方でニクソンは特に精神医学的な要素はなかった。むしろ、優秀なホモクリットであった可能性が高い。そして、環境対策や麻薬対策など安定した世の中にとっては有益な政治家であったのだろう。ウォーター事件の隠ぺいなどもチェンバレンと同様に現実から目を背けてしまうホモクリットの要素が出ているのではないだろうか。

 

すなわち、ホモクリットとノンホモクリットのどちらが優秀な政治家として認められるかはその時の時代との関連性があり、そして後世がその判断を下すのである。

 

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ケネディと似た要素を持つ近年の大統領がいる。モニカ・ルインスキー事件で有名なビル・クリントンである。彼はセオドアルーズベルトケネディに次ぐ若さで大統領になるも、数々の性的・政治的スキャンダルにより失墜した大統領である。アメリカでもモニカ・ルインスキー事件のようなスキャンダルは当然のごとく致命傷となったわけだ。その後当選したブッシュは誠実な印象を武器に大統領当選を果たすことになる。しかし、彼がイラク戦争を敢行した際には、”Nobody died when Clinton lied”(クリントンが嘘をついている時には誰も死ななかった)と揶揄されることになった。つまり、誠実さで当選した男の任期に性的スキャンダルで失墜した男を望んだフレーズである。(決してブッシュが無能だったと言いたいわけではない)

 

確かに、友人や家族はホモクリットな人間がいいだろう。自分が理解できない行動をとるような人間と共にありたいと思う者は少ないであろう。では、政治のリーダーはどうなのであろうか。「一流の狂気」はこういったことを考えさせてくれる著書であった。

 

明日からはこれらを受けてさらに個人的な考察を述べていきたい。