医学のつぶやき11(るーにー)"サッカーをすると認知症になりやすい?"
さて、今日はサッカーに関するユニークな論文を紹介したいと思う。筆者はサッカーよりは野球を好み、中学高校時代は野球やソフトボールをしていた。ソフトボールはとんでもなく弱小だったのだが、自分たちで練習法を考えるなど主体的に色々できて楽しかった思い出がある。ただ、決してサッカーが嫌いだったわけではない。昼休みなどに30人くらいで校庭にて毎日サッカーをしていた。ただし、筆者はキーパーが多かった。サッカーが苦手な人間はキーパーをやると決まっているのだ。海外だとキーパーの方が人気の国もあるようだが、これは国ごとの文化の差であろう。
紹介するのは“Neurodegenerative Disease Mortality among Former Professional Soccer Players.”(The New England journal of medicine. 2019 11 07;381(19);1801-1808)である。「元プロサッカー選手の神経変性疾患死亡率」についての論文だ。神経変性疾患とは、アルツハイマー病やパーキンソン病といった、神経が障害を受けることによって症状がでる病気のことを言う。
スコットランドの選手データベースから、元プロサッカー選手7676例と性別・年齢などが適合した一般住民を比較した(後ろ向きコホート)。結果をいかに記す。
・虚血性心疾患(心筋梗塞など)はサッカー選手群が有意に低かった(HR0.80 0.66-0.97)
・肺ガンもサッカー選手群が有意に低かった(HR0.53 0.40-0.70)
・神経変性疾患死亡率はサッカー選手で多かった(HR3.45 2.11-5.62)
・特にアルツハイマー病が最も高かった(HR5.07 2.92-8.82)
サッカーというスポーツをしていると運動習慣などから、生活習慣病としての心血管系イベントは減少するようである。感覚的にも納得できる。肺癌については、やや驚きである。さて、本題の神経変性疾患であるが、特にアルツハイマー病が多いというのもやや驚きである。決してアルツハイマー病について詳しいわけではないが、サッカー選手というだけでなぜこれほど上昇するのか。私見であるが、接触に伴う遅発性の脳損傷が起きている可能性があると思われる。アメリカンフットボールでは、認知症やうつ病が多いことは有名な事実であり、そのため、大きなヘルメットを装着しているのだ。
つまり、ヘディングが一役買っている可能性は否定できない。
この論文を読んで、昼休みにキーパーをやっていてよかったと少し胸をなでおろそうとしたが、結局心血管リスクは増えているので肩を落とした。全てがうまくいくなんてことはなかなかないようだ。