ヨルノサンポ団の日記

演劇集団のゆるい日記!twitter(@yorunosanpo0315)も!

朝の光を浴びながら、一緒に絵画を見ませんか?(高品)

まだ僕が大学の演劇サークルに所属していた頃、舞台の照明について色々悩んでいた時期がありました。なにぶん演劇を始めたのが大学生になってからのことだったので、知識もなけりゃ経験もなく八方塞がりだったわけです。

 

そんな折、ある先輩から「照明の勉強をするならフェルメールの絵画を見たらどう?」と気さくに言われたのです。そんな気さくに言われても。絵画なんてもっと難しいよ。

 

みたいなことを思いながらも、一応先輩を立てる心をまだ持っていた私はフェルメールの絵をネットで調べることにしました。

 

そうしましたらこれが意外にも本当に参考になったんですね。見栄を張るなと怒られてしまいそうですが、光と人と物が一枚一瞬にギュッと凝縮されている訳ですから、それは参考になるってものです。絵画なんてほとんど見たことなかった自分にもそう思わせるのですから、そりゃプロの方々については何をか況んやであります。

 

それ以来演劇で何か行き詰まった時には絵画を見るようになったのですが、結果的に絵画の歴史に詳しくなったわけでもなく、技法の素晴らしさに気づくこともなく、これいいな。この構図かっこいいな。この光めっちゃエモいな。みたいな幼児用プールくらいの浅さで"いいね"を押した絵画がいくつか溜まってしまったのです。

 

今回はそんな"いいね"の欄から3つくらいピックアップしまして、みなさんと共有しながら朝の時間を過ごしたく思います。では早速いってみましょう。

 

『士官と笑う娘』フェルメール

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エントリーナンバー1番はフェルメールの作品から。フェルメールの作品は柔らかに人や物を照らす光が特徴的で『牛乳を注ぐ女』などが有名ですが、マイフェイバリットはこの作品になります。

 

何より構図が素晴らしいです。左の窓から差し込む光が歯を見せながら笑う娘を照らしています。その対面に座りながら、この士官は一体どのような顔をしているのでしょうか。光源からゆっくりと光を追っていけば、描かれている光景の中で唯一暗く描かれている彼につい目がいってしまいます。

 

演劇的に解釈するなら、照明で照らすことなく対象の人物を観客に印象づける構図といえます。士官の表情は娘の笑顔に反射して、観客の脳裏に映し出されることでしょう。士官の存在は舞台上で最も印象的なものになります。

 

『パン籠(恥辱よりは死を!)』ダリ

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次の絵画はなんだか不穏なサブタイトルがついているダリの作品から。パンはダリにとって最も重要なモチーフであるとか、戦後のプロパガンダに使われたとか様々な逸話のある作品ですが、この記事ではその辺のところは一切合切割愛します。よく分からないんで。ごめんね。

 

机の上にパンの入った籠が置いてあるという非常にシンプルながら、どこか不安定さを感じさせる構図です。机から少しはみ出た籠がそうさせるのか、左上の奥に広がる深い闇がそうさせるのか。パン、籠、机、そして光の4つの安定した要素を絶妙に配置することで、匂い立つような危うさが演出されています。

 

舞台上の机はそれ自体が小さなもう1つの舞台である。という言葉があります。この言葉を借りるならパン籠は、舞台の端に片足を上げて一本足で立つ役者、といえるかもしれません。人だけではなく物の配置1つとっても、印象は大きく変化するんですね。

 

夜のカフェテラス』 ゴッホ

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最後の作品は有名な画家の有名な作品から。ゴッホの『夜のカフェテラス』です。先の2作品とは毛色は大きく異なるものの、この作品も構図の深い奥行きを感じさせます。

 

この作品の青と黄色の対比は非現実的なほど鮮やかです。路地の敷石はピンク色を帯びており、絵画全体が幻想的な色彩で描かれています。眩いばかりの黄色い光を放つカフェテラスですが、夜景の青とお互いを際立たせ合っており、これらと更に路地奥の黒が合わさって単純な構図以上の深さを感じさせてくれます。

 

この色の対比に憧れて色々な照明を試したことがあり、個人的にも思い出深い作品です。これほど上手くいくことはないんですけどね。

 

ちなみにこの絵のモデルとなったカフェテラスは現在も営業しており、外観はめっちゃ鮮やかな黄色だそうです。非現実的とか言ってすみません。

 

以上で朝に絵画を見る会を締めさせていただきます。みなさんの良い1日の始まりに少しでも貢献できていたら幸いです。

 

それでは!